過去連載 2015/10/15 公開

[VOL.10]商圏データは構成比だけに着目すればよい?|西野公晴の立地セミナー

前回は「商圏」評価を行う際の、便利な統計データ収集法について解説しましたので、今回は統計データを読む際の注意点を述べたいと思います。

統計データで、必ず調べると言っていいのが周辺商圏の人口の年齢別構成比です。「この地域は65歳以上の高齢者人口の割合が高い」とか「生産年齢人口(15~64歳)の割合が減少している」といった具合です。
昔、コンビニエンスストアが出店し始めた頃は、商圏評価項目のひとつに「単身世帯比率」が入っていました。
“若者の単身者の比率が高い地域ほど出店に好条件”と判断がなされるように、大手チェーンの立地採点表には点数のウエイトが設定されていた例もありました。

以上のように、商圏統計データを読む際は、一般的にその「構成比(割合)」に着目することが多いです。それを見れば“自店のターゲット層は多そうだ”とは確かに言えそうですが、果たしてそれだけで出店を判断してよいでしょうか?

そこで、実際の商圏データを見ながら考えてみたいと思います。

以下は東京都内の杉並区井荻と板橋区高島平に出店されている女性専用フィットネスの『カーブス』さんの事例です。
店舗から徒歩圏内の女性人口(カーブスさんは女性顧客のみ対象です)をGISで集計してみます。同じ距離の範囲です。

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カーブスさんのターゲットは「20代から60代の女性」とされていますので、女性人口全体に占める20~60代人口の構成比を算出すると以下のようになりました。

20~60代女性人口構成比

【井 荻】

59%

【高島平】

67%

これによると、高島平の方が井荻より8ポイントもターゲット層の構成比が高く、地域特性の傾向としてはより有利なように見えます。このように地域によって構成比が大きく異なることはしばしばあります。

では、20~60代女性人口の構成比ではなく、「実数」の方はどうでしょうか。

20~60代女性人口(実数)

【井 荻】

6,779人

【高島平】

6,782人

実はこちらは同数なのです。井荻が高島平に比べて劣っている、といったことはありません。タネを明かせば、店舗周辺の徒歩来店可能なエリアの女性人口が、井荻の方が若干多いため、このような結果になっているのです。

構成比だけで判断すると、それの高い(低い)方がよくて低い(高い)方が悪い、となってしまいます。
地域特性の傾向を判断するだけならそれでもよいと思いますが、店舗が経営的に成り立つかを考える場合は、わが店舗を支えてくれる潜在顧客(わが店舗向けの財布を持っている顧客)の「実数(絶対値)」も合わせて診ておく必要があるということです。
ちなみに、カーブスさんの場合は、「ターゲット(20代~60代の女性)人口が5,000人以上」という実数(絶対値)ベースでの明確な基準をお持ちです。流石ですね。

最後にもう少し付け加えるならば、下記の人口ピラミッドグラフをご覧になれば分かる通り、今回対比した井荻と高島平では、20~60代の中における年齢構成は大きく異なっています。
井荻は30~40代の実数が多く、高島平は60代(~70代)の実数が多くなっています。
20代から60代の中でも、現在のカーブスさんの主力客層が50代以上であることを考えると、この人口ピラミッドから言えることは、高島平は今まさに主力客層の絶対数が多く存在する“旬”の立地であり、井荻はこれからが楽しみな立地ということになると思います。

皆さん、商圏データは構成比(割合)だけに着目するのではなく、経営を成り立たせるための実数(絶対値)基準を満たしているのかを、しっかりと確認してくださいね!

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西野 公晴

筆者:西野 公晴

中小企業診断士。1983年東京学芸大学教育学部卒業、89年中小企業診断士登録。マーケティングリサーチ会社を経て1993年に独立してアール・アンド・シーを設立。商業施設の立地診断・出店戦略策定、売上予測モデルの構築指導、FC事業化コンサルティング、街づくり診断などの分野で活躍中。(一社)東京都中小企業診断士協会フランチャイズ研究会幹事、(一社)日本フランチャイズチェーン協会研究会員、㈱日本フランチャイズ研究機構取締役、中小企業大学校講師。1960年生まれ三重県出身