- 日本料理店は無形文化遺産登録をされた「和食」を提供する飲食店であり、世界的にも注目度が上がっている。
そのため、インバウンド需要の拡大に合わせ、今後の更なる成長が期待される業態である。
目次
日本料理店の開業のメリット・儲かるチャンス
コンセプトが大量にあり、特徴を出しやすい
- 一般的な認識においては「日本料理店」には明確な料理が決まっておらず、地域ごとの魚介や山菜などの、日本の風土を生かした素材を活用した料理となっている。
- 日本は、海や山といった自然に恵まれた国であるため、開業エリアに合わせて、現地の食材の素材生かすような、調理を行うことで差別化が図りやすい。季節によっても、各地域の名物が異なることも、魅力に繋がっている。
- “日本料理店”と言っても、下記に挙げるような様々なコンセプトに分かれており、非常に幅広い料理店を指している。
- 天ぷら専門店
- とんかつ屋
- ちゃんこ鍋店
- 沖縄料理店
- うなぎ店
- すき焼き店
- しゃぶしゃぶ店
- 精進料理店
- 精進料理店
- ふぐ料理店
- 鳥料理店
- 郷士料理屋
- かに料理店
- 懐石料理店
- 割烹料理店
「ハレの日の料理」として、高価格帯でも成立するビジネス
- 江戸時代末期の開国以降、洋食が日本人の食生活に取り入れられたため、飲食店も多様化していくことになった。
しかし、江戸時代の後期に登場した「なだ万」や「美濃吉」は現在も老舗の日本料理店の名店として繁盛しており、高価格帯の日本料理店は、今も冠婚葬祭やハレの料理として欠かせないものであり、独自の進化を遂げた上で生き残っている。
インバウンド需要の拡大と、海外展開
- 2013年には「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されたため、海外でも日本料理店が増加している他、本物の日本料理を求めて、インバウンド需要も拡大をしている。
- 訪日外国人観光客にとって「日本食を食べること」はトップクラスのニーズとなっている。
そのため、訪日外国人観光客の取り込みができるエリアに開業する起業家は、メニューの多言語化や、写真の掲載を増やすなどの対応が必要である。 - タブレット端末によって、メニューの管理・注文などが行える形式にすることで、外国人でも利用がしやすい店舗にできる。
しかし、あまりにもシステマティックにしてしまうと、風情が感じづらくなってしまうようなコンセプトの日本料理店も存在するため、店のウリと合わせて、意思決定すべき事項である。 - 逆に、日本国内の大手フランチャイズ店などが、海外に出店を拡大する傾向も見られる。
競争環境と、フランチャイズの活用
- 高価格帯の大手チェーンとしては「なだ万」「木曽路」「かに道楽」「梅の花」などが挙げられる。
大衆向けの店舗としては、「かつや」「和食さと」「夢庵」「とんでん」などが挙げられる。 - 高級料理店であれば法人の商談需要や、ハレの日のファミリー需要が期待できる。
安価な和食レストランであれば、ファミリー層・個人などの幅広い層から日常使いの需要を見込むことができる。 - 日本料理店は、フランチャイズ展開をしている企業も多く、加盟することで、同じサービスを短期間で提供できるようになる。
市場規模と、顧客単価のトレンド
- 日本料理店の市場規模は、2兆円を超えており、飲食業界全体の中でも大きなシェアとなっている。
- 総務省の家計調査によると、外食の中でも和食の年間支出金額は外食のなかでも最も高い。
しかも、安定的に推移していることからも、景気の変動の影響なども受けづらいというメリットがある。
ただし、当然ながら、事業コンセプトによっても安定性は異なっており、高価格帯の和食店は不景気に弱く、低価格帯の店ほど、比較的安定性が高いと考えられる。
健康に良い
- 日本食は、栄養バランスがとりやすいメニュー構成となることが多く、出汁の”うま味成分”や、発酵食品を使うことで、動物性油脂の摂取量も抑えることができるので、肥満防止などにも役立っている。
このことが、日本が世界の中でも、長寿大国として成功している理由の1つと考えられる。
廃棄ロスが少ない
- 食材は野菜や魚介といった生鮮品が多いため、美味しい新鮮な食材を食べてもらうためにも、必要な数量だけ少量ずつ、高頻度で仕入れるのが基本である。
結果として、食材が腐りづらく、廃棄ロスを抑えることにも繋げられる。
現金商売であるため、開業後の資金調達の苦労が少ない
- 一部、キャッシュレス決済なども増えてきているものの、現金回収となることも多い業種であるため、運転資金を日々の収益で賄うことがしやすい商売である。
- ただし、店舗の老朽化に伴い、改装が必要になった際には、まとまった資金が必要となることから、資金調達が必要になることもある。
特に高価格帯の店舗の場合は、内装等を常に美しい状態で保つ必要があることからも、低価格帯の店よりは定期的に費用が発生するものと考えられる。
日本料理店の開業のデメリット・リスク
人手不足
- 少子高齢化による労働人口の減少の影響は、日本料理店の経営においても問題となっている。
高級日本料理店のようなコンセプトでは、着物の着付けや、高度な接客技術も必要となるため、人材確保や育成が特に問題となっている。 - そのため、外国人労働者の採用を活発に進め、従業員の教育・研修制度を整備することで、労働力を確保する動きが求められている。
日本料理店の開業に、必要な初期費用・開業資金。資金調達方法は?
- 日本政策金融公庫の新創業融資制度や新事業育成資金の活用によって、開業資金の確保に動くことができる。
- 株式会社海外需要開拓支援機構(クールジャパン機構)などの協力を得る形で、海外展開を進めることもできる。
日本料理店の開業を「成功させる」ポイント
店舗の価格帯応じた適切な打ち手
- 高価格帯の店舗の場合は、厳選された食材・調理・盛り付けや、接客などの付加価値を上げることで、客単価を向上させることが重要である。
逆に、安価な大衆店の場合は、フランチャイズなどに加盟することで、大量一括仕入れを行い、原材料費の削減や、採用力・育成力強化などのコスト抑制が経営成績に効きやすい。
四季に応じた料理を提供する
- 日本には四季があることからも、季節に応じて、素材を変えたり、花・葉等で料理を飾りつけたりすることで、季節に応じた魅力を引き出すことががしやすい。
- 食を通じて、季節の移ろいを顧客に感じてもらうことも、日本料理店の経営の醍醐味である。
競合が弱くて、少ないエリアを選び開業する
- 日本料理店を、都道府県別に調査すると、東京都が最も多く、次いで大阪府・愛知県・神奈川県・埼玉県という順序になってくる。
基本的には、人口や企業が多い都市に多く出店がされている。 - さらに、市区町村単位や、駅別での分析をすると、競合の多さや強さなどが変わるため、開業エリアを細かく調査することで、勝率を上げることができる。
日本料理店の開業で「失敗してしまう」と儲からないポイント
カード等のキャッシュレス決済の手数料支払いの増加
- 生鮮市場等から仕入れ、現金払いで決済するのが一般的といえる。
顧客からの支払い方法は、現金も多いものの、インバウンド対策なども含め、キャッシュレス決済の導入が広まっており、支払形態もQRコードによる支払いなど、多様化しており、手数料の支払いが今後経営課題に発展しかねない。 - 特に高価格帯の日本料理店は、接待等に使われることも多いことや、テーブル単価が高くなることからも、クレジットカードによる支払の割合が多い。
そのため、キャッシュフローにも常に目を配る必要がある。
価格を上げるタイミング
- 不景気や、原材料の高騰などの外部環境の変化が起きると、価格転換をする企業が多いが、慎重に判断をする必要がある。
- もちろん赤字水準になってしまうようであれば、経営にテコ入れが必要なのは言うまでもなくないが、安易に価格転換をしてしまうと、客離れが起きてしまい、競合他社を勢いづかせてしまう要因にもなり得る。
- やむなく、販売価格の上昇をさせる場合も、競合の販売価格を上げるタイミングに合わせたり、そもそもの付加価値自体を上げた上で、価格に転換することが正しい打ち手である。
日本料理店の開業に必要な「資格・免許」は?
食品衛生法
- ナマモノも扱うビジネスであることからも、一定の食中毒リスクなどが発生し得る商売である。
そのため、顧客を守る観点からも、食品衛生法が密接に関わってくる。
保健所の営業許可と指導を受ける必要がある。
日本料理店の開業に関連する「申請・届出・規制法律」
生活衛生関係営業の運営の適正化及び振興に関する法律
- 料金等の規制、営業の振興の計画的推進、苦情の処理体制整備など、消費者の利益を守るための法律である。
食品リサイクル法
- 食品の売れ残りや食べ残し等を減らし廃棄する量を減らし、飼料や肥料等の原材料として再生利用するた めの法律である。
日本料理店の開業は儲かる?実際に聞いた売上・利益
- 「日本料理店」の、売上総利益率は平均で60%台と比較的高いものの、販売費・一般管理費も高いことから、結果的に、営業利益率も1%未満になってしまうことも多い。営業利益率が高い会社でも、10%を超えている会社はなかった。
- 事業コンセプトにもよるが、調理スタッフや、ホールスタッフなどの、人件費が必須で、新規採用も難しい業態も多いことから、販管費が大きくなりがちであり、必ずしも儲かるビジネスとは言い難い。
- 自己資本比率も10%台と低い企業が多く、設備投資にお金がかかる店舗も多いことからも、借入金に対する依存性が高い企業も多い。
- 実際に日本料理店の開業オーナーから、聞いた売上・利益等の損益計算書データを下記に記載しておくので、参考にして欲しい。
売上高 | ¥177,527,600 |
原価 | ¥67,460,488 |
売上総利益 | ¥110,067,112 |
販売費・一般管理費 | ¥101,190,732 |
営業利益 | ¥8,876,380 |
- 本記事の内容は調査時点のもので、独自調査による推測の情報を含んでおります。数値等の情報を含め保証されるものではありません。
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