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屋形船の独立開業で儲かる成功の極意。メリット・デメリットや、必要な資格等も解説

目次

屋形船の開業のメリット・儲かるチャンス

高単価ビジネスである

  • 屋形船の料金はほとんどがコース制で設定されている。2人からの予約ができる乗合船の料金は、大体1万から1万5,000円程度で、料理の質や量に応じて選べる3つのコースが主流である。
    7,000円台のコースも存在するものの、多くは1万円を超える料金が設定されている。
  • 団体での利用時の料金は、おおよそ1人1万円で、最大で約100人までの収容が一般的である。
  • 特定のイベント時、例えば花火の際には、料金が1人3万円に跳ね上がることもある。

事業者数が少なく、ニッチなマーケット

  • 屋形船事業者を調査した結果、全国に約600の業者が存在することが分かった。
    ほぼ全ての都道府県で事業者が存在するが、東京都と神奈川県が全体の約20%を占めている。
  • 多くの屋形船業者は、一つ以上の屋形船を所有していると考えられるが、その具体的な数は不明である。
  • もし平均的な屋形船の座席数が50席であると仮説を立てると、全国に約600の業者が存在するとしたら、合計約3万席の座席があることになる。年間の稼働日数を70%と計算すれば、年間でおおよそ766万席の稼働が予想され、客単価が1万円とすれば、約766億円の市場規模となる。
  • これを業者数で割ると、1業者あたりの年間売上は約1億2,766万円である。
    ただし、これには乗船率が影響し、経済の動向によって市場規模は大きく変動する。

選択できるビジネスモデル・コンセプトが多い

屋形船の飲食事業

  • 通常、屋形船ではアルコールは飲み放題で、料理は天ぷらや刺身を中心に提供される。デザートや冬季の鍋料理も充実している。
  • 例えば、東京湾では、もんじゃ焼きを主役としたメニューを提供する屋形船も存在する。
    各船宿には独自の特色やサービスがあり、顧客の心を掴むために競争が行われている。

観光需要取り込み

  • 多くの屋形船は出発地点と到着地点が同じで、往復する形式が主流である。
  • しかし、異なる出発・到着地点を持ち、特定の観光コースを組み込んでいるものも存在する。
    大半の乗船時間は2〜3時間程度である。

船宿(宿泊事業)

  • 船宿とは、釣り船や屋形船の運営を主とする家を指す。
    宿という名の通り、実際は船の貸出業を中心に行う。
  • 歴史を遡ると、江戸時代には交際の場としての人気が高かった。
    特に水の都として知られる東京や大阪では多かった。
    現代においても、屋形船を提供する事業者の多くはこの船宿の伝統を受け継いでいる。

広がる活用方法

  • 時代と共に利用者からの活用方法は変わってきており、法人からは、会議室としてミーティングや研修、社内イベントに利用される機会も増えている。
  • 個人からは、特別感が得られる花火大会の観覧や、結婚式等のライフイベントに利用されたりする機会が増えている。

廃棄ロスが少ないビジネスモデル

  • 屋形船は、飲食業界とも解釈できるが、前もっての予約が大半を占めるため、一般的な飲食店とは違い、廃棄ロスなどによる損失はほとんど無い。
    予約は電話やウェブを通じて行い、日時や人数、費用等の詳細を確認して予約が確定する。
  • 支払いは通常、サービス提供時に行われるが、キャンセルに際してはキャンセル料が必要となる。
  • キャンセル料の割合は予約日によって異なるが、例えば前日や当日は100%、2日〜6日前は70%、7日前は50%、20日前は30%のような設定が一般的である。

営業拠点を移動できる

  • 屋形船産業は、全国の業者の約10%が東京都にあり、主に東京湾や隅田川などのに集中している。
  • 当然ながら、屋形船の営業には海や大きな川が不可欠であるため、東京都以外でも海岸沿いや大河沿いに業者が多く存在する。
  • 開業エリアによっては事業者数が集中するため、開業する場合は、入念な市場調査を行う必要がある。
  • しかし「屋形船」という特性上、営業効率が悪いエリアと判断をすれば、開業後であっても船を移動させることにより営業拠点を変更することができる。

新規参入者が少ない

  • 屋形船業は、主に海運業や船宿としての側面があることからも、純粋な専業業者の存在は少ないと考えられる。
  • 初期投資額が大きく、乗降場所や食材の提供先などの運営の要点を整える必要があるため、完全に異なる業種からの参入は少ない。
  • この背景から、既に関連する事業(クルーザーや遊覧船などの資産を持つ事業者)を展開している事業者の新規事業という立ち位置からの立ち上げも大きい。
  • 自社に船などの資産がない場合、新規で取得するか、自社は集客や企画などに特化し、他の事業者と連携することで開業するケースもある。

屋形船の開業のデメリット・リスク

基本的に不景気に弱いビジネスモデル

  • 屋形船業界は昭和のバブル時代に需要が盛り上がった。
    しかし、平均的な利用料金が1万円と高いため、リーマンショック後の不景気には多くの事業者が業績を落とした。
  • 基本的には、不景気に弱いビジネスモデルと言える。

既存の同業者間での競争がある程度激しい

  • いくらかかるかは事業コンセプトにもよるが、基本的には開業資金が高くなることからも、新規参入のハードルは高い。
    屋形船業界は飲食業界と解釈ができるが、その特異性からも、競争は主に同業者間(屋形船業者同士)で行われる。
  • バブル景気の頃と比べて、現在の需要は減少しているのが現状である。
    このような状況下では、同業者間の競争は避けて通れない。

競合の数も少ないが、開業費用が大きい

  • 屋形船の起源は、平安時代の宮中の「舟遊び」に遡る。織田信長や豊臣秀次は、戦国時代に宮中の舟遊びを模倣して船上で詩や茶の湯の集まりを開いたという記録がある。
  • 特に屋形船の黄金時代は、江戸時代に到来した。隅田川を中心とした江戸の水上交通が成熟し、文化や経済が発展すると、武士、大名、裕福な市民や商人たちが屋形船での遊びを楽しむようになった。この時期には、全国各地で屋形船が普及し、洗練された娯楽として受け入れられた。
  • 初期の屋形船は小規模であったが、時が経つにつれて、より豪華で大型のものが作られるようになり、有力な大名たちがその華やかさを競うようになった。これらの船の装飾は極めて豪華で、金や銀、漆、絵画などで彩られていた。
  • 当時の屋形船では芸者と楽しむことも一般的で、「その美しさは筆で書ききれない」とまで評された。
  • その規模は、長さ約20m、幅約5.4m、10部屋もの大きな船も存在し、この豪奢さに制限をかけるための法令まで施行されたと言われる。
  • 屋形船の人気は、江戸幕府の滅亡後も持続し、明治、大正、昭和初期まで「洗練された娯楽」として続いた。しかし、昭和20年代に第二次世界大戦での敗北後、屋形船を楽しむ余裕が失われ、東京の河川の汚染やコンクリートの防壁の建設により、その存在はほぼ消え去った。
  • どの程度の規模や内装・外装にするかによっても開業費用は大きく異なるものの、基本的には多額の開業資金が必要になると考えるべきだ。
    必要資金の多さからも、競合も数も少ないため、ニッチなビジネスとして狙い目と考える経営者も多い。

異業種との競合もある程度ある

  • 競合という視点を広げれば、提供する料理のジャンルで日本料理店や料亭、レジャー施設としてはデパートや遊園地、そして団体客向けの会場としての居酒屋やホテルも競合として位置づけられる。

単価も高いが、コストも高い

  • 屋形船の料理は主に高級な日本料理を提供しており、この料理を担当するシェフは豊富な経験が求められる。
  • 価格帯が通常の飲食店よりも高いため、質の高いサービスが期待され、その結果、人件費も高くなる傾向がある。
  • 屋形船は飲食店ビジネスとも考えられるが、一般の飲食店にはない「燃料費」も考慮して経営をする必要がある。

天候リスク

  • 船での移動が発生することからも、一般的な実店舗ビジネス以上に、天候の変化に敏感になる必要がある。
  • 天候不順が続くと、継続的に新規での営業ができない状況が続き、大きく業績を落としかねない。

消費税増税の影響を受ける

  • 2019年10月、消費税は8%から10%に上昇した。この税率変動によって、食品の外食は新税率の10%が適用される一方、持ち帰りに関しては軽減税率の8%が採用されることになった。
  • この変更を受け、飲食業界では、店内での飲食よりも持ち帰りの選択をする顧客が増加した。
  • 屋形船の場合、基本的には店内飲食が前提となるため、今後も消費税の変更が同じ形式で行われる場合は、再度マイナスの影響を受けることが考えられる。

屋形船の開業を「成功させる」ポイント

閑散期にも集客ができる企画をする

  • 主な需要期は、春の花見、夏の観光、冬の忘年会や新年会で、これらのシーズン外では利用者数が減少する。
  • このような状況に対応するため、閑散期に屋形船産業は下記のような取り組みによって集客を行っている。
    • 複数のグループが同乗することを前提に、少人数からの予約ができるようにする。
    • 結婚式や宴会の特別な用途に適したコースプラン作りを行う。
    • 他の業界との協力し、飲食情報サイトへの掲載、観光バスとの提携、海外からの観光客獲得を行う。

インバウンド市場を取り込む

  • 訪日する外国人観光客の数が増えてきたため、屋形船業界もインバウンド市場の拡大を見越している。
  • 日本独自の文化を体験できる屋形船は、外国人観光客にとって魅力的であり、期待される需要が増大している。
  • 特に多くの外国人観光客が訪れる地域の屋形船業者にとっては、効果的な宣伝や外国語対応など、インバウンド需要に応える取り組みが不可欠である。
  • 定期的に観光ビザの緩和が行われたりすることで、海外からの観光客の増加が期待されている。
  • 海外観光客に日本の伝統文化を提供する手段として屋形船は有効であり、今後はどのように海外市場を開拓し、サービスを拡充するかが業界の成長の鍵となる。
  • 海外の旅行代理店と直接取引し、訪日観光客の獲得に向けた動きも見られる。

団体客だけではなく、個人客の取り込みをする

  • 屋形船では、通常の飲食業と同じく、定期的なメニューやサービスの更新が求められている。
  • コースの内容変更はもちろん、団体客向けに海上セミナーや結婚の披露宴に対応するような細やかな取り組みも必要だ。
  • 団体客が見込めない閑散期も存在することから、個人客向けの誕生日プランやランチの提供も増えてきている。

各種コストの変動に気をつけ、付加価値を上げる

  • 屋形船の収益は、ほとんどが現金・ないしは回収の早い収益である。
    予約注文性であることからも、在庫を大量に抱えることが少ないため、キャッシュフローが大きく悪化するリスクは低い。
  • しかし、食材の価格や燃料費の変動は注意が必要である。
    特に原油価格の大きな変動は、事業の利益にも大きく影響を及ぼす。
    そのため、原材料としての生鮮食品の価格や、燃料のコストの上昇は厳しく監視するべきである。
  • 本質的には、ある程度コストが上昇しても、利益が出せるように、常にサービス等の向上に努め、高単価ビジネスとして成功させるのが良い。

事業コンセプトに合わせた開業資金で始める

  • 基本的に屋形船の開業資金は大きくかかるが、船の規模は10~100人規模など様々であることからも、小さい船を選べば小資本での開業もできる。
  • 自社の持つ経営資源や、経営者の戦略に応じた開業方法を選択するべきだ。

屋形船の開業で「失敗してしまう」と儲からないポイント

需要の取りこぼしが多い

  • 屋形船の需要は年間通じると少ないイメージがあるが、春は花見や歓送迎会、夏は花火大会、秋は紅葉、冬は忘年会・クリスマスパーティー・新年会などがあり、意外と1年間で安定的な需要がある。
  • 一方で「クリスマス」など、特定の記念日の場合は需要が1日に集中する場合もある。
    その際は需要を捌き切ることができず、大きな機会損失が発生するリスクがある。
  • 特定の1日だけに需要が集中する場合の対応策としては「運営する屋形船を増やす」方法が考えられるが、初期投資額の大きさからも気軽に選択できる経営判断ではない。
  • そのため、繁忙期に関しては立食形式にするなど、収容人数を増やしたり、需要量に応じて、料金設定を大きく変えることで、受注する日程を調整するなどの工夫が必要となる。

開業エリアを間違えると儲からない

  • 屋形船は江戸時代より続く日本の文化として根付いているが、近年の経済状況の悪化に伴い、その存続が厳しくなってきている。
  • ただし、特定の地域においては逆にマーケットサイズは拡大していると考えられる。
  • 例えば東京においては、新たな観光スポットとして東京スカイツリーが完成し、新しく観光ルートが生まれたことで、マーケットサイズは大きくなったと考えられる。

乗船率が慢性的に低い

  • 乗船率は、屋形船業の利益性において最も大きな影響を与える要素である。
    貸切の際には収益とコストを予め算出できるが、乗合の場合には運航毎に燃料費が必要となるため、乗船率を高く保つことが経営課題である。

仕入れの現金が足りなくなる

  • 屋形船で食jを提供する際の食材は、生鮮市場から直接食材を仕入れるのが一般的である。
    購入する際、生鮮市場への支払いは主に現金で行われる。
  • 船内の厨房設備を活用し、前処理された食材は船上での調理が施されて提供されることになる。
  • 屋形船ビジネスは、繁忙期に仕入れが大量に必要になることからも、現金が不足して「料理が提供できないから注文を断らざるを得なくなる」ということが無いよう、常日頃からキャッシュフローには目を配る必要がある。

資金調達に失敗する

  • 屋形船業の運営においては、経営が安定していれば新しく新規で資金調達をする必要性はない。
    だが、燃料価格の急騰や、事業拡大のため、新たな船の購入する際は大量の資金が必要となることもある。
  • そのため、新しい船の導入は、大きな資金が必要となることからも慎重に判断をするべきである。
  • 屋形船は時間経過と共に劣化していくため、定期的な改装等の設備投資も必要となる。

IT投資を怠る

  • DX時代にあたり、自社のウェブサイトの運営や予約システムの導入、検索サイトへの広告掲載や、口コミを積極的にもらうなどの経営活動は、新規顧客を集めるために不可欠である。
  • しかし、IT強い人材が少ないことからも、このような取り組みを十分に実施していない事業者も多く見受けられる。
  • 地方では、近隣の屋形船業者同士で組合を組織し、共通の予約サイトを運営する例もある。

屋形船の開業に必要な「資格・免許・関連法」は?

食品衛生法

  • 業務においては食品の提供が中心であるため、保健所の許可や指導を受けることが必須である。

海上運送法・内航海運業法

  • 海上運送法や内航海運業法に基づき、内航運送の事業を始める場合には、関連する海運局からの許可が必要である。
  • さらに、船舶職員や小型船舶の運転者には、資格や免許が要求され、これは国土交通省が管理している。

食品リサイクル法

  • 食品リサイクル法によって、大きな規模の食品生産者は食品廃棄物の削減や再利用を義務付けられている。
  • 本記事の内容は調査時点のもので、独自調査による推測の情報を含んでおります。数値等の情報を含め保証されるものではありません。
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