この記事の簡単な要点
- メリット・儲かるチャンス
- 市場の棲み分けが明確: 高級店と大衆店の二つのカテゴリーが存在。
- 堅調なマーケット: ステーキ専門店市場は成長傾向。
- キャッシュフローが良い: 現金販売が主で在庫を少なく保てる。
- デメリット・リスク
- 法人需要の落ち込み: 高級店はリーマンショックやパンデミックの影響を受けている。
- 平均単価の下落: チェーン展開する大衆店の増加により市場全体の価格が低下。
- 初期費用・開業資金
- 高級店の場合: 店構えや内装により高額な初期投資が必要。
- 融資制度: ステーキ店特有の融資制度はないが、政府系金融機関からの融資ができる。
- 具体的な費用: 物件賃借、内外装、厨房設備、広告宣伝など、詳細を記載している。
- 成功のポイント
- 牛肉の選定: 高品質の牛肉の選択が重要。
- 店舗コンセプトの適合: 高級店や大衆店に適した付加価値を提供。
- 収益性向上: 小規模店とチェーン店では異なる戦略が必要。
- フランチャイズ加盟: ロイヤルティの支払いが必要だが、経営ノウハウのサポートが期待できる。
- インバウンド需要の取り込み: 特に高級店において重要。
- FL比率の管理: 材料費と人件費の割合を適切に保つ。
- 競合の少ないエリアでの開業: 地域的な需要を見極める。
- IT投資: プロモーションや経営情報収集に活用。
目次
「ステーキ屋・ステーキハウス」の開業に必要な「準備・手順・流れ」
STEP
本記事を読み込んで、参入価値がある市場か検討
STEP
事業計画の作成
STEP
開業エリアの調査
STEP
資金調達
STEP
物件の取得と、店舗の建築・改装
STEP
従業員の募集・採用面接
STEP
営業許可の申請
STEP
集客のための広告活動
STEP
プレオープン
STEP
開業
「ステーキ屋・ステーキハウス」の開業のメリット・儲かるチャンス
価格帯によって、市場の棲み分けができている
- ステーキ専門店は、大きく高級店と大衆店の二つのカテゴリーに分けられる。
高級店は主に法人客や祝い事などの需要の取り込みを対象としており、リーマンショックや、パンデミック以降の法人接待の減少から回復しつつある状況にある。 - 一方、大衆店は「いきなり !ステーキ」のような業態が成長が成長した通り、値段設定、食材の選択、サービスの工夫により、堅調なマーケットとなった。
かつては高級店のイメージが強かったステーキ店も、最近ではリーズナブルな価格で展開するチェーン店が増加している。 - どちらのタイプの店舗も、それぞれの利点を活かしながら顧客を引きつけ続けることが重要である。
また、材料の品質やサービスの水準を維持しつつ、FL比率を適切に管理することも、成功の鍵となる。
堅調な成長を見せるマーケット
- ステーキ専門店に関する具体的な統計データは見当たらないが、ガストが「ステーキガスト」を2010年から始め、ペッパーフードサービスが「いきなり!ステーキ」の1号店を2013年に開店し、類似の業種が全国で広がっていることからも、ステーキチェーンの増加傾向は明らかである。
キャッシュフローが良い
- ステーキ店では、現金販売がほとんどであること、棚卸し資産(在庫)をあまりもたないことから、キャッシュフローを悪化させる要因は少ない。
- 経常利益が黒字の店舗であれば、営業キャッシュフローはおおむねプラスになると考えられる。
「ステーキ屋・ステーキハウス」の開業のデメリット・リスク
法人需要の落ち込み
- 法人客を主要ターゲットとする高級ステーキ店は、リーマンショックや、パンデミックに伴う世界的な経済危機の影響を受け、法人接待が減少した。国税庁の調査からも交際費の減少は高級ステーキ店にはネガティブに働いていると考えられる。
平均単価の下落
- ステーキ専門店は、業界全体として大きく平均単価を落としたというデータは見られないが、フランチャイズをはじめとした、チェーン展開する大衆店の増加により、市場全体としてのステーキ店の販売価格は低下していると考えられる。
- しかし、チェーン店でも高級和牛や、付加価値の高い特別な飼育方法を採用した牛肉のステーキを提供するなど、高単価メニューも存在する。
「ステーキ屋・ステーキハウス」の開業に、必要な初期費用・開業資金
- 下記に、店舗面積28坪・19席の店舗のステーキ屋を開業する際に実際にかかった初期費用・開業資金の事例を記載する。
- 高級店の場合は高級ステーキ店としての店構えや内装が必須となるため、他の飲食店と比較しても、初期投資額は大きくなる。
- ステーキ店特有の融資制度は存在しないため、他の飲食店と同様であるが、政府系金融機関からの融資を活用することができる。
中小企業を対象とした金融支援策は、地域によって異なるが、一般的には都道府県の中小企業支援センターや商工会・商工会議所が窓口となっている。
また、日本政策金融公庫や商工組合中央金庫などの専門機関も、中小企業に対して金融サービスを提供している。 - これらの金融支援策は、新規出店や設備投資、運転資金の確保など、ステーキ店経営におけるさまざまな資金ニーズに対応するために利用される。
融資の申請や手続きは、各機関の規定や条件に従って行われるため、具体的な支援内容や利用条件については、それぞれの機関に直接問い合わせる形で進めることになる。
政府系金融機関や地域の商工支援機関を通じて、適切な資金調達手段を探ることが、ステーキ店経営の成功には重要である。
物件の賃借初期費用 | ¥7,500,000 |
内装費用 | ¥10,500,000 |
外装費用 | ¥3,800,000 |
厨房設備費用 | ¥1,200,000 |
その他設備費 | ¥1,150,000 |
広告宣伝費 | ¥350,000 |
従業員募集広告費 | ¥230,000 |
開業前の研修期間中人件費 | ¥850,000 |
雑費 | ¥800,000 |
合計 | ¥26,380,000 |
ステーキ屋・ステーキハウスの開業を「成功させる」ポイント
店舗コンセプトに合わせた付加価値の出し方をする
- ステーキ店の一般的な業務オペレーションは、客の前で調理する鉄板焼きステーキ店と、キッチンで炭火や鉄板を使用して調理する形式の二つのパターンがある。
- 鉄板焼きステーキ店は、接待などに使われる高級店が多く、海外や東京都中央区に出店されている紅花のようにパフォーマンスを売りにしている店もあれば、比較的手頃な価格の店も存在するが、一般的には高品質な肉を提供している。
- 通常のステーキ店は大衆店が主流で、フランチャイズなどチェーン店の形態を取ることも多い。
東京都北区の「どんグループ」のフォルクスや愛知県名古屋市のブロンコビリーのように、サラダバーを武器にする店も存在する。 - 調理方法は、店舗によって異なるが、高級店では目の前で焼く鉄板焼きスタイルが多くみられる。また、大衆店では熱した鉄板の上に焼いたステーキを置いて出す形態が多い。
店舗コンセプトに合わせた収益性向上のポイントを抑える
- ステーキ店の収益性を高めるポイントは、店舗の規模によっても異なる。
小規模店では、価格に対する付加価値が重要であり、質の高い料理やサービスを提供することで客数と販売価格を維持することが求められる。 - 一方で、チェーン店は、大量仕入れや効率的な人員配置・オペレーションを組むことによるコスト削減が収益性向上のカギとなる。
フランチャイズに加盟する
- 新規出店の際にはフランチャイズチェーンへの加盟も有効である。
- 開業時に不足しがちな、仕入、営業、設備、管理等の経営ノウハウについてフランチャイズ本部からの支援が受けられる。
- その反面、フランチャイズ本部へはロイヤルティの支払義務が生じることはデメリットとして挙げられる。
フランチャイズ本部によっても違うが、支払うロイヤルティの金額は売上高に対する割合(数%)が一般的である。
インバウンド需要の取り込み
- 法人需要が減少する高級店は、戦略として収益源の多様化が必須となっている。
例えば、訪日外国人客の獲得や地域社会との密接な関係構築が重要である。 - 特に中国人客が日本のブランド牛肉を好む傾向があるため、これらのニーズに応えることが検討課題の一つである。
FL比率を許容内に抑える
- FL比率とははfood and labor costの略称で、材料費(Food)と人件費(Labor)の合計を指す。
飲食店における経費のうち、多くを占めるのが材料費と人件費で、いずれも欠かすことができない経費だから最も見られる経営指標である。
この売上高に対するFLコストが占める割合を示したものが、FL比率である。 - 一般にFL比率が低いほど利益率が高くなるが、食材の質を落としたり人員削減による人件費削減したりするだけでは、一時的に利益を出せても継続的な黒字確保は難しい。
- FL比率の適正数値は一般に60%といわれるが、業種によっても異なるが、やはり55〜60%水準は確保したい。
牛肉の選定において介在価値を出す
- ステーキ店に限った牛肉の消費量に関する具体的な資料はないが、国産牛肉の生産量や輸入量に関するデータは、農林水産省のデータから得ることができる。
- 国内産の牛肉はしばらく横ばいで推移していたが、直近ではやや落ち込みんできており、逆に輸入牛肉は増加傾向にある。
- 牛肉の特性を正しく理解し、店舗のコンセプトに合った牛肉を選ぶことも、ステーキ店の介在価値である。
- 牛肉の格付けは、A-5、B-3などのアルファベットと数字の組み合わせで表される。アルファベット部分は肉の歩留まりを表し、AからCへと進むにつれて歩留まりが低下する。
- 数字は肉質を示し、「脂肪交雑」「肉の色沢」「肉のしまりとキメ」「脂肪の色沢と質」の4項目に基づいて等級が決定される。等級は5から1まであり、数字が大きいほど等級が高い。
競合の少ないエリアで開業する
- ステーキ屋の出店エリアは、地域的に、首都圏や大都市圏に集中している。
しかし、チェーン店の場合は郊外を中心に全国に展開しているケースもある。 - ガストは元々ファミリーレストランとしての展開からステーキガスト形式の店舗を全国に広げている。
- コロワイドの「ステーキ宮」は、主に中部地方以東での展開が目立ち、愛知県や神奈川県に多くの店舗を構えている。
- 「いきなり!ステーキ」は元々東京都を中心に駅前での出店が多かったが、主要な道路沿いや、他の飲食店が撤退した居抜き物件も多い。
IT投資を行う
- 大手チェーン店ではPOSレジや広告宣伝において、積極的にITを活用しているが、個人経営のような小規模な店ではいまだに課題が大きい。
- インターネットを利用したプロモーションや、SaaSを利用した経営情報の収集などへのIT活用は、比較的容易で効果的である。
ステーキ屋・ステーキハウスの開業で「失敗してしまう」と儲からないポイント
産地偽装など、信頼を失う事件を起こしてしまう
- 食品の産地偽装事件や宮崎県での口蹄疫発生などの事件を受けて、消費者は安全で安心な食品を求めるようになった。
- これらの事件は、問題が起きた宮崎県産の牛肉に限らず、全国の牛肉に対する消費者の不安を広げた。
- そのため、ステーキ専門店では、店内やウェブサイトで食材の産地情報を明示し、安全性を訴求することが重要とされている。
競争相手を見誤る
- 高級ステーキ店の競争相手としては、同業他社や高級洋食店が挙げられるが、高級店は調理技術やパフォーマンスなどを含め、参入障壁が高いため、競争相手の増加は少ないと考えられる。
- 一方で、大衆ステーキ店にとっての競争相手には、焼肉店やファミリーレストランが含まれる。
これらの業態は、フランチャイズなど、積極的なチェーン展開を行っていることから、ステーキ店の増加に伴い競争はさらに激しくなると考えられる。
食の安全性に対する投資を怠る
- ステーキ屋では、生肉を扱うことからも、食品安全に関する関心が高い業種である。
そのため、HACCP(危険度分析による安全管理)の導入も普及しつつある。 - 仕入れから保管、加工、調理、配膳に至るまでの全工程で安全対策を施すことが必要であり、服装管理、手洗い習慣、加熱調理や解凍の時間など、細部にわたる管理が求められている。
- 企業や店舗の規模に関わらず、これは今後ますます重要になる管理技術と言える。
現金が足りなくなる
- 通常牛肉は、卸売業または生鮮市場から仕入れる。決済は現金がほとんどであるが、取引先が固定されている場合は、月末払いや掛仕入も行われる。
- サイドメニューの食材も生鮮市場からの当用仕入が一般的で、決済は現金で行われる。チェーン店は直接輸入したり買付けをするケースも多く、これらは掛取引である。
- 顧客への販売代金は、商品・サービスの提供後に現金やクレジットカードで支払われる。
- 固定されている取引先からは掛仕入が行われる場合があるが、掛仕入の支払は、通常30日程度が一般的である。
- ステーキ店は原則現金商売であり、仕入資金、賞与を含めた人件費等の運転資金は、開店後はできれば通常の手持資金内で賄うべきである。
- ステーキ店は、新規出店・開業および、設備投資のタイミングで多額の費用・資金を必要とするが、投資額は立地やターゲット、業態によってかなりバラツキがある。
ステーキ屋・ステーキハウスの開業に必要な「資格・免許・申請届出・関連法」は?
- 食品衛生法
- ステーキ店では、調理品を提供する業務内容であるため、保健所からの営業許可が必要であり、その指導を受ける必要がある。
- 食品リサイクル法
- ゴミ問題の解決を目指し、一定規模以上の食品製造事業者等に食品廃棄物の排出量削減と肥料や飼料への再生利用を義務付けている。
ステーキ屋・ステーキハウスの収支モデル
項目 | 金額 | 売上対比率 |
売上高 | ¥102,500,000 | 100.0% |
売上総利益 | ¥63,037,500 | 61.5% |
販売費及び一般管理費 | ¥54,376,667 | 53.1% |
人件費 | ¥40,890,000 | 39.9% |
家賃 | ¥8,500,000 | 8.3% |
減価償却費 | ¥2,266,667 | 2.2% |
その他費用 | ¥2,720,000 | 2.7% |
営業利益 | ¥8,660,833 | 8.4% |
- 本記事の内容は調査時点のもので、独自調査による推測の情報を含んでおります。数値等の情報を含め保証されるものではありません。
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